インバウンドをはじめ、人の流れも急速に回復している昨今、経済産業省が公表している「商業動態速報」を見ると、ここ1年間の小売業は一部時期を除いてすべて前年比でプラスに転じている。例えば、「ショッピングセンター」では、22年の3月以降プラス成長が続いており、コロナ前の19年度比でみると、22年10月以降マイナス幅が徐々に狭まり10%以内のマイナスで推移。
「百貨店」は、6月の売上高が前年比7%増の16カ月連続のプラス。19年比は5.1%減と前月とほぼ同水準で推移するなど回復基調が続いており、中でもインバウンドは、ほぼコロナ前の水準へと戻っている状況だ。「化粧品」においては、インバウンド需要に加え、メイクやUV関連商品が好調で前年比18.7%増、前月からの伸び率は2.9ポイント上昇と非常に好調な動きをみせている。
こうした小売の状況をうけ、化粧品専門店の動向について専門店経営者の方に話を伺うと「お肌のタッチアップやエステをはじめ、お客さまの美(化粧品)に対する意欲は上がってきており、ようやく底から抜けだしたという印象」と感じている方が殆どで、アフターコロナが進む都市部を中心に、徐々に「実績が戻り始めている」と話す専門店が増えている。
各メーカーの動きとしては、コーセーの「リポソーム」を皮切りに、最近では資生堂の「クレ・ド・ポー ボーテ」が、スキンケア・メイクともに非常に好調な動きをみせているほか、活動に全力を注いでいるアルビオンでは「タッチアップから新規へと着実に繋がっている」など、しっかりと活動を通して地盤を固めている状況だ。
期待されていたメイクに関しては、「前年比200%といったような爆発的な動きはないが、CPB・デコルテ・エレガンスなど各メーカーともに新商品の反応が高く、指名買いで来店される方も。消費者の外出意欲が高まっている今、『インウイ』をはじめとする新ブランド導入にも期待が高まる」という声が多く、地域によって差はあるものの、少しずつコロナ前の動きへと戻りつつある状況と言える。
一方、予想外の展開としては「夏に向け脱マスクが進むと見込んでいたが、想像していたよりもマスクがとれていない」といった状況で、都市部では5割程度、地方によってはまだまだマスクの定着率が高いという。
それ以外では「コロナで一旦離れたお客さまが戻ってきた」という声や、「脱マスクにより、たるみケアが高まると思っていたが、現状はまだまだシミと毛穴悩みが圧倒的に多い」など、アフターコロナに向かっていること、いないことが混在している状態にあり、まだまだ過渡期の途中であることが見て取れる。
そうした過渡期を迎えた中で、重要課題として捉えられているのが〝活動の見直し〟である。某専門店経営者は「確実に変化したことは『人の動きはコロナ前に戻った』ということ。要は、忙しい人が増えたと言える。その上で、例えば時間のない中で来店されたお客さまに対し、短時間でもお店の魅力や価値を感じていただける接客や活動の強化が不可欠になる」と訴える。
接客に時間をかければ顧客満足が上がるかというとそうではない。大切なのは、顧客の消費動向が多様化している昨今、接客時間と活動の質をいかに正比例の関係へと導く意識改革が必要だと感じている。
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