全国の化粧品専門店が加盟する「全粧協」では、資生堂との「BQ取組プログラム」をはじめ、コーセーでは新たに「プレディア スパ・エ・メール」、カネボウでは「トワニー」の取り組みが検討されている他、各単組の府県粧協においても様々な事業が誕生しているなど組合活動の活発化が目立っている。某情報通によると「化粧品に限らず組合への事業参入を狙う企業は増えている」と話すなど、長年に亘り信頼を積み重ねた組織体制が今、異業種を含め様々な企業から魅力ある団体として価値を高めはじめている。(中濱)
■化粧品組合に〝熱視線〟
全粧協では、昨年6月時点で所属員数は前年に比べ288店減少の3407店となった。全盛期の組合員数からすると減少幅は大きいが、この問題はなにも組合に限られたことではない。超高齢化社会が加速度的に進む時代において、人口減少は避けられない問題であり、化粧品業界においても、少子高齢化による後継者問題は以前から課題として捉えられてきた。
資生堂取引店が9割を占める全粧協の傘下組合員の減少が顕著であるとするならば、同じく資生堂の取引店数も減少しているということであり、資生堂としても専門店流通、ひいては国内の回復を目指す上で、組合との協働を高めあい、お互いに売上回復を目指していくことがWIN―WINへの近道になるのではと考える。
特に、全粧協加盟店は地域に根差したお店が多く、BC派遣やメーカー支援が少ないお店が大半を占める。言い換えれば1店あたりの売上規模は小さいかも知れないが、メーカーにとっては利益率の高いお店の集合体であるともみてとれる。
こうしたお店が、それぞれの地域で「がんばろう」と思えるような仕組みづくりを構築できたならば、メーカーとしてもボトムアップに繋がるのではないだろうか。
更に店舗減少問題については、全粧協だけではなく、もっと業界全体として俯瞰的に考える必要がある。ただ単に店数の減少が問題なのではなく、ハイプレステージ化粧品を販売する上で欠かせない〝人を介し、質の高いサービスで顧客を育成する〟ことができる唯一無二のお店が減っているということが最も根幹であることを忘れてはならない。
地域によっては化粧品店の空白地帯も生まれてきているなど、この状況に危機感を抱かざるをえないと同時に、美容部員の派遣をはじめ、お店への支援が減少している現状を鑑みたならば、更に閉店・廃業を検討するお店も増える可能性は大いにあるとも考えられ、本当にこのままでいいのかと記者は問いたい。
要するに、お店が廃業するのは一瞬だが、そのお店が培ってきたお客さまとの信頼関係やメンバー数はもう戻らないという事実と、先述のとおり空白地域が生まれた場合に、その地域の再生は難しいことが挙げられる。
またアフターコロナを迎え、これから業界が盛り上がりを図っていくなか、もちろん超一流とよばれるお店への選択と集中は必要だが、片側で全体的なボトムアップも同時に図っていくべきだと思うのである。
■〝組織力と販売力〟価値高まる
なかには「全粧協は今後更に縮小し厳しくなるのでは…」と危惧される声も聞かれるが、実は昨今の組合の動きをみていると、組合に対し新たな活路を見いだし、参入を狙う企業が増えているという側面が見え始めている。
前文でも触れたとおり、全粧協ではコーセーが「プティメール」に「スパ・エ・メール」を加えた化粧水・乳液で強化を図る他、カネボウでは専門店専用ブランド「トワニー」での取り組み開始を検討しているという。
更に、各府県粧協においても意欲的に事業拡大を図る組合も出てきており、一例を挙げると、兵庫県粧協では「カウンセリング専門化粧品店専用品」として、兵庫組合独自の美容食品「ビューティーコラーゲン乳酸菌プラス」の開発・販売を開始し、積極的に組合員の利益の為に組合事業の活性化を図るべく動き出している。
大阪府粧協では、「肌箋集28」を推奨ブランドとして展開を開始し、高い利益商材として徐々に取扱い店数は増えており、さらに他の府県粧協にも水平展開で広がりを見せている以外にも、新たに化粧品関連では「日本オリーブ」の展開も開始した。
異業種という点では、介護施設の紹介・仲介サポートを行う「シニアサポートマーガレット」、店舗改装や急な店舗トラブルなど店舗設備を全面的にサポートする「エヌライフ」との取引を開始するなど、化粧品関連だけでなく、店舗やライフスタイルまで貢献することで、組合員が安心して日々を過ごせる環境づくりの整備を進めている。
■今こそ協働高める時
このように、コロナ禍を経て組合推奨ブランドは着実に増えており、某情報通によると「今後も組合への参入を考えている企業はある」ということからも、組合に対するメリットや期待感を感じている企業は以前よりも増えていることは間違いない。
その理由としては、長年に亘り信頼を積み重ねた組織体制であり、事務手続きを含め安心して取引ができることがひとつ。2つめが、一定数の組合員数が見込めること。そして3つめが、専門店の〝人を介した接客力及び販売力の高さ〟の価値である。
47都道府県単組の運営力をはじめ、その全体を束ね〝攻めの改革〟を図る津村理事長率いる全粧協の組織体制、そして組合加盟店の接客・販売力は、専門店の数が減っている今の時代だからこそ、より必要とされる存在になってきていると言えよう。今こそ組合、そして専門店が力を発揮する時であり、メーカーと力を合わせ共に業界の発展を目指してほしいと願う。
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