2023年、化粧品業界は新たなフェーズを迎えている。その中で最も注目なのが〝インバウンド需要の回復〟だ。これまで化粧品メーカーは「インバウンドはおまけ」という考えが主流であったが、観光立国の実現を目指す政府の方針、そしてインバウンドが国内の景気回復の起爆剤になると言われている中で、もはや無視のできない市場へと成長している。またコロナによって体力を大幅に落とした化粧品メーカーにとっても、今年はインバウンドでしっかりと利益を確保し、国内の成長軌道に向けたボトムアップに繋げていく必要性があるのではと感じている。(中濱)
■インバウンド復活がカギ 景気回復に〝期待大〟
水際対策の緩和が実施された10月以降、訪日外国人客数が急激な伸びを示している。日本政府観光局(JNTO)が発表した「訪日外国人客数」をみると、10月は約49万人、11月は93万人、そして12月は137万人とコロナ禍以降初の100万人を突破、コロナ前の2019年同月比の約5割まで回復した。
しかしながら、インバウンド需要の約4割を占めていた「中国人観光客」12月の訪日客数は、ビザの停止や日本の水際対策の強化によって19年比で95.3%減の3万5000人にとどまっている。ただ、現状最も低い値であり、今後緩和が進めば伸びていくであろう市場だけに期待感は高い。
小売業のインバウンド状況としては、日本百貨店協会の12月の商況をみると「免税総売上高」は、前月より81.5ポイントアップの約214億円(前年同月比484.7%増・9カ月連続増)、「購買客数」は約19万人(同2233.6%増)となり、19年比でみた売上高は28.9%減と、コロナ前の7割まで回復している。
一方、国内の百貨店の12月の動向は、消費増税の反動が残る19年比で2.1%減、特殊要因のない18年比では7%減と、いずれも前月よりマイナス幅は縮小しており、その中で「化粧品」の売上高は対前年比で3.7%増の10カ月連続プラスと着実に回復に向かっている。
また化粧品専門店の動向を聞くと「コロナによる感染者の増減、あるいは物価高による買い控えによる影響からか、『お得な日』にまとめ買いをするお客様が増えている。メーカー別では、コーセーのデコルテが全体をけん引している状況で、全体的な底上げはもう少し先か…という印象だ」と話す。
■化粧品メーカー 利益確保し成長軌道へ
こうした現状を踏まえたうえで、23年度の化粧品業界をみると、化粧品市場全体はインバウンド効果による成長が期待される一方で、専門店流通においては緩やかな回復になるだろうと予測され、専門店の本格的な復活については24年に持ち越されるのではないかというのが記者の見方だ。
その背景には、現状の課題として足元の利益が減少していることが要因として挙げられ、例えばリベート改定の影響や美容部員派遣の減少は専門店にとってかなりの痛手になっていると聞く。
しかしながら、メーカーも国内市場の回復が遅れていることに加え、物価高によって更に利益が圧迫されている現状を鑑みると、専門店に対する十分な支援や施策を投じたくても出来ない状況であることは間違いなく、この状況を打破するためには、まずはメーカーの体力回復が最優先課題になると考える。
その為には、先程申し上げたとおり、国内市場は緩やかなカーブで成長線を描き、24年が初動の年になると予測されることから、23年は〝インバウンド需要の回復〟がカギになると着目している。23年のインバウンド展望をみると、インバウンド需要は3兆円、GDPにおいては0.4%程度押し上げると予測されており、インバウンドが国内景気回復の起爆剤になると言われている。
観光立国を目指す日本。これまで化粧品メーカーは〝インバウンドはおまけ〟という考えが主流だったが、今後はインバウンド需要をどう前向きに捉え、組み込んでいくかにシフトするべきではないだろうか。そしてそこで得た利益でもって国内の成長軌道へのボトムアップを図り、ひいてはメーカーも専門店も明るい未来へと向かってほしいと思う。
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