今年5月にコロナが感染法上で5類に引き下げられ、すっかりコロナ前に戻った今、化粧品業界では各社から大型の新製品やブランドが導入される等して確実に動きは活発化。そうした状況の中で記者が注目したのは、それら魅力的な商品・ブランドに対する専門店の捉え方で、殆どの専門店は「店頭にお客さまを呼べる商品やブランドが増えるのはありがたい」と期待感を高める一方、「うちの店はこれで勝負していく」と思える商品・ブランドを求める声も聞こえてくる。(半沢)
■数ある中からの選択
2023年も残り1カ月となった。今年一年を振り返れば、資生堂では代表取締役会長CEOとして魚谷雅彦氏、社長COOとして藤原憲太郎氏の二人三脚による新体制が1月1日付けで始動したのを皮切りに、化粧品出荷実績で3年ぶりに販売金額が増加した他、日本化粧品専門店協会(CoRe)、日本化粧品工業会(粧工会)が始動。そして、大阪エリアを中心に化粧品専門店による大型店や新業態店を相次いで出店する等、様々な出来事があった。
ただ、今年最も話題を集めた出来事は、今年5月にコロナが感染法上分類で5類に引き下げられことで、社会全体がコロナ前の状態に戻った。化粧品業界もそれに呼応するように、下期以降、新商品や大型ブランドが相次いで導入される等して業界全体に確実に動きが活発化している。
そうした各社の積極的な商品施策に対し、殆どの専門店は「店頭にお客さまを呼べる商品やブランドが増えるのはありがたい」と期待感を高める一方、「うちの店でこれで勝負していく」と思える商品・ブランドを求める声も聞こえてくる。
テナント店や集客立地の大型店の場合、話題性の高い商品・ブランドを豊富に取り揃えることで集客し、実績拡大につなげることができるが、路面店の場合、店舗面積やスタッフの数、運転資金等の経営資源に限りがあるため、数ある商品・ブランドの中から選択をしなければならない。
そして、選択する際に優先しなければならないのは、お店に合っているのかどうかだろう。その理由は、その商品・ブランドとお店での取り組みや強みによる相乗効果であり、逆にお店と合っていなければ期待通りには至らない。従って、お店個々で「どういうお客さまに、どういう商品やブランドを広めていきたいのか」を改めて確認しておく必要がある。
■勝負する商品・ブランド
先日、「STORY2023」で取材した「アクアファーマシー橋本店」がそれだ。
お店の本店は薬局であるため、お客さまの体調を聞いて、その症状に合った薬を提案する。後日、その薬で症状が改善したかを確かめる、いわゆる「薬局的発想」を持つ専門店である。
お店の担当者いわく、化粧品に対しても同じ考え方で取り組まれているそうだ。専門店として当たり前の活動ではあるがスタッフ全員が徹底して取り組み続けており、高い信頼感を得ている。そんなお店がコーセーを軸に取り組む背景には、お店の「薬局的発想」とメーカーの店頭活動や取り組み、接客応対等、日々の活動との親和性が高いことがあげられ、実際、周辺には競合店が数多く存在する中、順調に実績を伸ばし続けている。
このお店の場合、「うちの店ではこれで勝負していく」と思えたのがコーセーだったということ。勿論、他の専門店でも「これだ」と思えるものはそれぞれにある。メーカー各社の話題性の高い商品・ブランドを導入し、その魅力をさらに高めていくには、店頭での取り組みや強みと、商品・ブランドがどれだけリンクしているかで全く違う。
そうなると、メーカー営業の提案力も大きなポイントといえる。その提案とは、その商品・ブランドにどう取り組んでもらうかである。各社では来年も積極的な商品施策を展開していくだろう。そのためにも、お店では「これだ」と思う商品・ブランドを選択するための準備を、そしてメーカーの営業は、「うちの店はこれで勝負していく」と選択してもらうための準備を、この2つの準備が今後の専門店流通を盛り上げていく大事な要素に思えてならない。
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