海外からの渡航客が増え「人手不足」が深刻化した2019年。当時、人手不足による倒産が156件と年間最多を更新したが、アフターコロナを迎えた今年、2019年を上回る勢いで人手不足による倒産が相次いでいる。特に「労働集約型産業」の厳しさが目立つ中、化粧品専門店においても人手不足の影響が色濃く出てきており、客数が徐々に増えてきている片側でスタッフ不足が深刻さを増している。人材確保が急務の課題として挙がる今、専門店で働くことの魅力づくりが求められている。(中濱)
■深刻化する〝人手不足〟
コロナ禍が明け、いよいよ本格的に経済が動き始めようとしている中で、今〝待った〟がかかっている。その要因は〝人手不足難〟だ。
東京商工リサーチによると、2023年1~7月累計の「人手不足関連倒産件数」は83件(前年同期比159.3%)と2.5倍に急増。すでに前年の年間件数62件を超え、このペースで推移すると年間最多の2019年の156件を超える可能性も出てきているという。
この背景には、コロナ禍で市場が縮小したことにより人手不足のひっ迫感が薄れていたことに加え、人員削減を行った企業も多く、人員削減を行った企業のうち約6割が人手不足に陥っているというデータが出ている。
要因別としては、「求人難」が最多の35件、次いで「人件費高騰」が29件、「従業員退職」が19件となり、特に人件費が高騰している中で、賃上げ余力が厳しい企業は人件費の上昇が資金繰りを圧迫し倒産に至るケースが多い。業種別では、以前より人手不足が慢性的に起こっている運輸業やサービス業、建設業以外にも、製造業や小売業なども前年を上回っているなど、「労働集約型産業」の厳しさが目立つ。
化粧品専門店流通においても人手不足は深刻さを増している。10月号の専門店キャッチアップ(16日号掲載予定)にて、「人手不足の状況とその上での人材育成」について各店の取り組みについて掲載するが、現在の人手不足の状況について聞くと、「地域に必要とされる化粧品専門店を目指すにあたり、最も重要なことは人材の確保である。しかし、業界全体として人手不足の状況にあり、いかに自社を選んでもらえるか、また在籍しているスタッフにいかに長く働いてもらえるかなど、社会の変化にも柔軟に対応し働きやすい環境づくりをしてくことが必要だ」と共通の課題認識を抱いている。
実際に、求人をしても「応募数は著しく減少している」という声の他にも、「既存のスタッフも結婚や出産などで減少している上に、コロナが明けて客数が大幅に増えていることで店頭が十分に回らない状況となっている」など、現状すでに厳しさをうかがわせる様子が見受けられる。
■「給与と福利厚生」の充実が鍵
その上で、今後人材を確保させていく為の手段としては大きく2つ。「給与」と「福利厚生」をいかに充実していくかがポイントになる。
しかしながら、「給与」に関しては、まずは売上と利益があってこそ可能になる部分となるため、全てのお店がベアアップできるとは考えにくい。そうなると、「福利厚生」をはじめ、働きやすい環境づくりをいかに強化していくことが、化粧品専門店が選ばれる大きな要因になると考える。
その中で、星の国では「パートやアルバイトの働きたい時、働ける時募集」により、当面の人手不足を解消する片側で、社員になるべく人材の求人を続けたところ、少しずつ人材が充実する流れになっているという。
■〝Z世代対応〟も課題
更に、化粧品専門店では、スタッフの「結婚・出産・育児」対応をどうするかが以前から挙げられてきたが、サロンドコスメVIVEでは「ママ社員に対しては、フルタイムで働ける段階を設け、復帰時に相談し決めていく」というように、スタッフ一人ひとりのライフスタイルや生活プランに寄り添った働き方を導入している。
また働き方に新たな考えを持つ〝Z世代〟の対応もこれからの課題として顕在化している。その中で専門店の強みは、小さい会社だからこそ融通も利くということ。その強みを活かして人材難時代に立ち向かってほしい。
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