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日本商業新聞

【2022/9/5 日本商業新聞】デジタル浸透拡がる

 この数年、我々が生活していく中で、益々デジタルは無くてはならないものになっている。先日、日本通信販売協会(JADMA)では2021年度の通販(EC)市場の売上高を発表。前年比7.8%増の11兆4600億円となり、その規模は年々拡大している。また、ECだけでなく、サービスや取り組みにおいてもデジタルを活用することが増えており、普段の生活に深く浸透している。ただ、デジタルが拡がっていくほど、その一方でリアルの大切さも再認識されているのは言うまでもない。(半沢)



■デジタルとリアルの2軸に注力


 冒頭でも記したが、この数年のデジタルの進化は目覚ましく、特に2019年以降、その進化のスピードはさらに増している。そのデジタルの分野において、我々の生活に最も身近なのがEC。先日もアイスタイルが米国アマゾンと三井物産との業務資本提携を発表。まだ、この3社の提携でどうなるのかわからないが、アマゾンの説明によれば化粧品カテゴリーの強化が目的であり、今後Amazon.co.jpで「@cosmeSHOPPING(仮称)」のオンラインストアを立ち上げる予定だ。


 このECも含め、ここ数年、化粧品業界でもデジタル技術を活用した新たな取り組みが数多く導入。例えば大手メーカーが注力する非接触型サービスがそれで、直近では8月にコーセーがコンセプトストア「メゾンコーセー銀座」の1階を刷新し、最新技術を取り入れたメイクシュミレーター等のビューティアトラクションが新たに導入される等して話題を集めた。


 またメーカーだけでなく、化粧品専門店においてもこれまでの活動の中にデジタルを活用することで成果を上げているお店が増えている。その取り組みとは「情報発信」であり、LINEやインスタグラム、ツイッターやユーチューブを使ったり、店頭でデジタルサイネージを使って情報を発信する等、店頭活動に取り組んでいくうえで欠かせなくなっている。


 以前にも紹介したことがあるが、ある専門店の場合、会員へのDMを「ハガキ」「メール」「LINE」と数種類用意して、会員毎に普段よく使う手段で発信。利便性と既読の確率を高めるためだ。


 また、違う専門店では、お手入れを店頭活動の軸にしており、その予約に関する作業を全てLINEで完結。以前は電話で予約受け付けをしていたが、LINEにしたことでスタッフがお手入れに集中出来るようになった他、お客さまも簡単に予約出来るため、お手入れを受ける際の心理的なハードルが下がり、お手入れの数だけでなく、新しいお客さまの数も増えたと聞く。


 こうした事例からもわかる通り、デジタルは単にECだけでなく、それ以外、お店のことを知ってもらうことや、来店してもらうことでもメリットを生み出している。また、それはメーカーにも当てはまることであり、この化粧品業界においてもデジタル活用という流れは、今後さらに拡がりを見せるだろう。



■リアルの重要性を再認識

 

 しかし、その中で大切なのは、デジタルを活用した取り組みは、あくまでも化粧品の魅力を知ってもらうことや、購入する際のサポートが中心だということで、専門店であれば、お店での活動や魅力を知ってもらうためである。だからこそ重要なのは化粧品や専門店の魅力、つまり価値に興味を持ったお客さまがお店に来店され、その価値に触れた時、思っていた通り、もしくはそれ以上のものを感じられなければ購買には繋がらない。もしかすると「なんだ、こんなものか」と逆効果になる可能性もある。


 先日、アイスタイルでは「コロナ禍後の化粧品小売とアイスタイルのリテール戦略に関するラウンドテーブル」を行ったが、その中で「生活者は化粧品を3度評価(①商品を買う前に「欲しい/欲しくない」、②商品を買った後に「良かった/良くなかった」、③商品を使った後に「使い続けたい/使い続けたくない」と説明、それで言うとリアルは全て関係している。


 繰り返しになるが、デジタルを活用した取り組みが拡がるほど、一方でリアルに求められることも増える。だからこそ、デジタルとリアルの2つの軸を同じく充実させることが大切である。

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