日本国内の化粧品市場は、コロナ禍による影響で未だ回復が遅れているが、そうした中で際立った動きを見せているのが、カウンセリングスキンケアを主体とする「ハイプレステージブランド」だ。資生堂の「クレ・ド・ポーボーテ」、コーセーの「デコルテ」及び「アルビオン」は成長のけん引役として好調に推移しており、特に「デコルテ」においては秀でた動きを見せている。そこで、デコルテの強さの裏にはどのような要因があるのか、その背景について考察する。(中濱)
まず「コーセー」上期全体の売上高は、1306億円(前年同期比4.4%増)、日本市場の売上高は757億6000万円(同5.6%増)となり、マスチャネルで展開しているプレステージは引き続き苦戦した一方で、専門店・百貨店チャネルのハイプレステージは好調に推移した。
具体的にみると、プレステージブランドの「雪肌精」は前年に比べ9億円減収した一方で、ハイプレステージの「デコルテ」は、4億円増の422億円、日本市場では、32億円増の128億円と大幅な伸びを見せた。
同じくハイプレステージの「アルビオン」は、スキコンリニューアルが奏功し、前年比13億円増の248億円と業績を後押しする結果となった。
次に「資生堂」だが、上期全体の売上高は、4933億9900万円(同0.4%減)、日本事業は同17.4%減の1156億6700万円と厳しい結果となり、主要スキンケアブランドでみると、「SHISEIDO」が前年比5%減、「イプサ」同14%減、「エリクシール」同13%減と苦戦を強いられる中、「クレ・ド・ポーボーテ」においては同6%増と、唯一前年を上回る成長を見せた。
■〝店頭起点〟を大切に
このように、コロナ禍で未だ厳しさが拭いきれない中、顧客との接点が強いハイプレステージかつカウンセリングブランドの強さが際立つ。特に「デコルテ」の成長は目覚ましく、数々のヒット商品が誕生していると同時に、若い世代の新規ユーザー獲得に一石を投じている。
そこで、デコルテの強さの要因について化粧品専門店にアンケートを実施。そこから見えてきたのは、①モノづくり②マーケティング③店頭(現場)起点の発想の3点に分類されることが分かった。
1点目の「モノづくり」では「ヒット商品のローンチ」が挙げられ、多くの専門店から『テンションの上がるハイセンスなパッケージに加え、新規を獲得できる価格帯の商品がきちんと設けられていることで、既存ユーザーに加え、若い世代の新たなユーザーが獲得できている』という声が集まった。
2点目の「マーケティング」では、SNSと店頭の連動に注目。『リポソームのリニューアルが大きなきっかけとなった。集中した広告戦略と3日分のサンプルを徹底配布したと同時に、店頭ではプロモーション及び売場づくりの連動を行ったことによって、その後デコルテブランドのブランド価値が一気に高まった』『新商品や既存アイテムのプロモーションが計画的で途切れることなく話題を提供できており、結果としてヒット商品が作れている』など、話題を生み出すマーケティングが強いブランドづくりに貢献したと言える。
3点目の「店頭(現場)起点の発想」だが、某経営者は『施策展開の理解・事前準備・実行・検証等において、デコルテは完遂度を高めるべく、現場の営業担当・美容部員が一体となっている』という声の他、メイク什器においても『他社のメイク什器の効果を確認し、そこから自社に落とし込んだメイク什器でお客様からの興味や触って頂けるものを開発している』など、〝現場起点〟を大事にした取り組みが特長となっており、店頭からの評価も高い。
■本社・現場・店頭まで一体感
このように、デコルテは商品だけでなく、「本社、現場(営業・BC)、店頭」が一体化となっていることがより相乗効果をもたらしていると言えよう。下期もコロナ禍のスタートとなったが、カウンセリング主体のハイプレステージブランドの動向と共に、デコルテに続く各社の戦略に期待したい。
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