• 日本商業新聞

【2022/6/27 日本商業新聞】デジタル化の本質とは

 コロナ禍が始まり3年目を迎え、ようやく行動制限の解除をはじめとした〝リアル回帰〟へと時代が戻りつつある中、化粧品専門店の店頭では、「デジタル化」を更に加速させるメーカーと、「リアル」の店頭活動を再開・強化する専門店との間にギャップが生まれ始めている。そこで、今店頭ではどのような声や意見が挙がっているのか、またメーカーと専門店が同じ方向性に向いていくには何が今必要なのかについて考察する。



■時代はリアルの回帰

 最近「資生堂はリアル店舗の価値創出に対する取り組みが後回しになっているのではないか」という声が専門店から聞こえてくる。その背景には、コロナという未曾有の出来事が起こり、デジタル化が急速なスピードで進んでいる中、資生堂では「オミセプラス」の開設などデジタルでの取り組みを強化。


 それに対しては、「有事の際に商品を購入できる手段」、あるいは「時代の潮流として仕方がない」など、ある程度「受け入れる」と答えたお店は多かったが、1年以上が経過した後の動向について聞いてみると「オンライン販売以外の機能が使えておらず、またオンライン販売の数も少ない」など、現状「オミセプラスに加入している価値が見いだせていない」と感じているお店が大半を占めている。


 更には、行動制限が解除され、この2022年~23年は〝リアルへの回帰〟に注目が集まる中、各店頭においても肌タッチやイベントなど、リアルを起点にした活動の再開が行われている一方で、「メーカーは変わらずデジタル活動のプッシュが多く、お店として取り組んでいくことの優先順位が分かっていないのではないか…」という声も漏れ聞こえてくる。


 要するに、リアルの回帰が叫ばれている時代において、専門店は「リアルの価値」を磨いていくことに重きを置いていることに対し、メーカーは変わらず「デジタルの提案」を加速させており、その中で店頭とメーカーの間に大きなギャップが生まれているということ。

 そしてこのギャップが、冒頭の「資生堂はリアル店舗についてやる気はあるのか」という疑問に繋がっていると言えよう。


 もう一つのギャップとしては、便利であるはずのデジタル施策が、結果として現場負担に繋がっているケースも多々あるということだ。

 

例えば、デジタルにおける各サービスをお客様が利用する場合「アカウント登録」が必要になるが、この作業は店頭での活動中に、店舗スタッフが行うというオペレーションになっており、ある専門店経営者は「そもそも論、メーカーのアカウント収集を、店頭スタッフが無償で販売時間を削ってまで肩代わりして行うことに疑問を持つ。実際に、現場では時間やコストを他の作業に取られていると感じており、正直今の専門店チャネルにおけるメーカーのデジタル施策は現場のモチベーションを上げているとは考えられない」と苦言を呈す。


■今優先すべきは〝店頭活動″

 しかしながら、メーカー側としても、先行き不透明で何が正解かが分からない中「専門店のお役に立つために」という思いでデジタル施策を推し進めてきた経緯もある。ただ、その思いが〝一方通行〟になってしまっているように感じている。

 重要なのは、あくまでも「リアルの価値」が出発点であり原点であること。そして「デジタル」を用いて、どのようにリアルを高めていくかという本質は決して忘れてはならない。だが、国内市場及び経済が〝リアル回帰〟の方向に向いている中で、やはり今は、リアルの店頭活動に〝一点集中〟することが第一義だと考える。


 その為には、現場(店頭)は今何を望んでいるのかをよく知る必要があるだろう。そこで次号では、「専門店が求めるデジタル施策」及び「今店頭で感じていること」について、実際の専門店の声をお届けする。

(中濱)