新型コロナが落ち着きを見せ始めた今、前にも述べたが、リニューアルする化粧品専門店が増えている。そのリニューアルも、集客重視でメイク関連を充実させたり、接客重視でお手入れスペースや接客スペースを充実させるなど様々だ。ただ、どのお店にも共通していたのは、「化粧品専門店らしさ」をさらに強める取り組みであった。一方、そうした取り組みで不可欠になるのはお店とメーカーが今まで以上に強い共働体制にあることで、そこに欠かせないのは、お店とメーカー双方の大きな決断である。
■ブランドや企業の理念重視
先日、クチコミサイト「アットコスメ」の運営会社、アイスタイルが「2022年下期トレンド予測」を発表した。その中で記者が注目したのは同社が実施したアンケート調査の中で「今後の化粧品選びがどうなるか」との問いに、「今よりも、環境への配慮などSDGsへの取り組みを重視するようになる」との回答が2割あることに対して、「今よりもブランドや企業の理念を重視して化粧品を選ぶようになる」との回答も同じく2割あったことである。
SDGsは、ここ数年多くの企業(メーカー)が特に注力する取り組みで、消費者からも高い注目を集め、商品選びの重点ポイントにもなってきている。今回のアンケート調査では、それに加えてブランドやメーカーの理念を商品選びのポイントの一つとして考える消費者が同じようにいることが明らかとなり、改めて女性の化粧に対して価格や機能だけでなく、商品に込めた思いも商品を選ぶ際の重要なポイントになりつつあることがわかった。
改めて考えると、これまで専門店においてはブランドの世界観を感じさせるコーナーづくりがこの数年増えていたのは感じていたが、その世界観の根柢にある、本質のブランドや企業の理念にも目を向ける消費者が増えるとするならば、コーナーづくりは当然のこと、商品、店頭施策、プロモーションも一層踏み込んだものでなければならなくなる。また、それだけではなく、消費者と対面して直接伝えていく美容部員やスタッフにも同じことが言える。
以前、百貨店や専門店でしか化粧品を購入したくないという女性に出会ったことがある。その女性は「ただ化粧品を買うだけならネットでもいいけど、自分の好きなメーカーやブランドのことを美容部員とお店のスタッフさんと語り合えることがとても楽しみなんです」と話していた。長年多くの女性の支持を集め続けているブランドや企業には様々な歴史があって、それも大きな魅力の一つとなっているのは間違いない。
専門店にはそうした魅力を感じて来店するお客様は少なくない。高品質で機能性の高い化粧品を愛用し続けるには、そのブランドやメーカーが長年積み重ねてきた歴史や魅力があり、今後そういうものを重視する女性が増えていくのであれば、それを伝えきるためにも活動自体を磨き上げることしかないだろう。
要はお店もメーカーも教育や人材育成、施策の面で、より踏み込んだ取り組みが必要で、そのためにも今まで以上に共働体制が必要となる。今の段階では、あくまでも予測に過ぎないが、新型コロナでオンラインの普及が進んだことへの揺り戻しも含めて、最近特にリアルの重要性を再認識する声が聞かれるようになっている。そうした環境の中、「理念」という本質を大事に考える消費者が増えるのはごく自然のことのように思えるのは記者だけだろうか。
■「一緒に頑張る」という決断
■強い共働体制が必要
新型コロナが拡大し始めた2019年からの約3年間、消費者だけでなく、お店もメーカーも「我慢」を強いられてきた。しかし、新型コロナで変化した消費者意識や購買行動に対応していくためには、お店とメーカーの強い共働体制が不可欠でそのためにもお店においては「このメーカーと一緒に頑張る」という決断、メーカーにおいては「このお店と一緒に頑張る」という決断を求められてくる。
そして、お店とメーカーそれぞれの決断があって初めて、これからの時代に合った形で「専門店らしさ」を強く打ち出すことに繋がってくるのではないだろうか。
(半沢)
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