行動制限やインバウンド解除など、ようやく日本国内においても前向きなウィズコロナへの姿勢が示される中、化粧品業界においては、依然として厳しさが残るマス領域に比べ、カウンセリングを主体とする「プレステージ領域」は各社回復基調に乗り始めているようだ。その背景には、やはり「自分に合った化粧品を選びたい」という〝リアルへの回帰〟と、お客様との〝絆の深さ〟が関係していると思われる。
■お客様との距離感「鍵」に
大手制度品化粧品メーカーの第1四半期が発表され、各社厳しい中での着地となったが、その中で際立った動きをみせているのが「プレステージブランド領域」の底堅さだ。しかしながら、「マス(組織)流通」においては未だ戻りきれていないのが現状で、その背景には「カウンセリングや接客・サービス」によるお客様との〝距離感〟の強さが表れているのではいかと感じている。
コーセーでは、プレステージ領域を中心とする「化粧品事業」は、「リポソームアドバンストリペアセラム」をはじめとする数々の商品でヒットを生み出している「デコルテ」が好調に推移し、売上高は前年比2・2%増の467億3200万円となった一方、「コスメタリー事業」の売上高は、同21・4%減の118億2800万円と減少。
5月にリニューアルを行った「新スキコン」で攻勢をかけるアルビオンは、「新規獲得」で大きな成果を挙げている他、専門店への利益還元策として打ち出した「フローラドリッププライムキット」も大変好調な動きをみせた。
資生堂では、新規及びリピートで好調な動きをみせている「BQ リセットクリア150周年感謝セット」や、「万物資生LIFE DEW」「CPB」への戦略的投資によりシェアを拡大。
カネボウでは、「グローバルカネボウ」の「スクラビングマッドウォッシュ」や「ヴェイルオブデイ」が根強い人気となっているなど、各社プレステージブランド領域においては回復基調にあることが見て取れる。
そこで、プレステージブランド並びにカウンセリングブランドを中心に展開する「化粧品専門店」の動向について、「2022年度の売上目標」を聞くと、「100%~110%(2021年度比)」と前年比超えを目標に定めているお店が多く、その理由として「昨年秋頃の緊急事態宣言明けから、主要メーカーの新規→肌診断→タッチ&カウンセリング→スキンケア購入者→リピーターのサイクルが回り出している」というように、カウンセリング商品を中心に、予約やリピートへと好調に動き始めており、更に肌タッチなど「お手入れ活動」が徐々に戻ってきていることも要因として挙げられる。
■伸び率鈍い「EC」
片側で、コロナ禍により大きく伸びると予想されていた「EC市場」だが、経産省が21年7月に発表したデータによると、「化粧品・医薬品」における「EC化率」は、コロナ前の19年度の6%に対し、20年度は6・72%と伸び率は思ったよりも低く、コロナ禍でもECを押し上げる動機には繋がらなかったようだ。
要は、やはり化粧品は「リアルで見て触って、自分の肌に合ったものを選びたい」という顧客心理はコロナ禍においても変わりはなく、専門店がぐっと伸び始めているのも、しっかりとコロナ対策をしながら、お客様との絆を深めてきた結果だと考える。
話は変わるが「コロナ禍でも前年比100%を切ったことがない」という、とてもパワフルな女性経営者と京都組合で出会った。その秘訣について聞くと「私の武器はスマホ1台。1日に朝5件、昼5件お客様に電話することが日課で、その他は店頭やメールで常にお客様との接点強化に取り組んでいる。なのでDMも送らないし、特別企画も年に1度のお歳暮だけ。とにかく1人ひとりのお客様といかに繋がりを深めることを大事にしている」という。
コロナ禍でもびくともしないお客様との関係づくりの裏には、お客様に対する観察・洞察力のアンテナを常に張り巡らし、日々勉強を欠かさない熱心な姿があると改めて専門店の強さを感じた次第だ。
(中濱)
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