■DGS新たな局面へ
〝安さ〟を売りにしてきたドラッグストアが変革期を迎えている。中でも「PB化粧品」への熱量が格段に上がっており、これまで苦戦を強いられてきた「中価格帯」の化粧品市場で差別化商材を次々と発売するなど、新たな化粧品購買層の取り込みに力を注いでいる。化粧品専門店にとっては、購買層が重なるなど脅威的な存在になることは間違いなく、ドラッグストアにはない〝専門店らしさ〟を磨き上げていくことが益々重要視される時代に入ったといえる。
■「PB化粧品」へ積極攻勢
ドラッグストア市場の化粧品の展開において大きな動きが見え始めている。その中でも積極的な攻勢をかけているのが「PB(プライベートブランド)化粧品」の強化だ。いち早くPB商品を強化してきた「マツモトキヨシHD」では、オーガニックコスメブランド「アルジェラン」やシワ改善スキンケアブランド「ザ・レチノタイム」を投下しPB化粧品の強化に注力。
そして「マツキヨココカラ&カンパニー」として経営統合後、第1弾となる敏感肌向けスキンケアシリーズ「レシピオ」を21年11月に発売。同商品は、発売2カ月で年間計画の3割を売り上げ、更に22年3月までに累計30万個超、約6億円を売り上げるヒット商品として名乗りを上げた。
また6月1日には、「ザ・レチノタイム」シリーズから、美白に特化した「ザ・レチノタイムホワイト」を投下。ふきとり化粧水から乳液までのベーシックケアに加え、美容液とマスクのスペシャルケアを加えた美白シリーズとなっており、美白ケア市場でもPB化粧品の存在を強めていく。
レシピオの発表会で登壇したマツキヨココカラ&カンパニー・専務取締役グループ営業企画統括の松本貴志氏は「マツキヨココカラの両社は、ビューティーケアの売上構成比が高く、統合による規模の拡大は大きな強みとなる」と話していることからも、同社の展開に今後も注目が集まる。
一方「スギ薬局」では、PBブランド初となる〝ジェンダーニュートラル化粧品〟「プリエクラU」を4月1日より発売を開始した。同ブランドは九州大学との連携で開発した技術「SNDP」を採用し、高品質な商品であることに加え、パッケージも白と黒を基調としたジェンダーレスな印象を打ち出し男性も取り込んだ展開を図る。
日経MJによると、同商品の男性の購入比率が全体の約4分の1を占めるなど当初の想定を上回っているという。
■高価格帯層からの支持獲得
注目すべきは、これまでドラッグストアのPBは「安さ」で差別化を図っていたが、自社での商品開発やデータ分析といった商品力の強化に加え、インスタライブや店舗での紹介活動など、顧客との接点拡大に取り組んでいるほか、スキンケアの核となる化粧水・乳液が2000~3000円と、これまで苦戦を強いられてきた「中価格帯層」で支持を集めているという点にある。
現に、マツキヨココカラの「レシピオ」は、百貨店等で高価格帯の基礎化粧品を購入していた層の獲得に成功しており、更にレシピオ購入層の約9割が新規客だという。また、実際に売場を見て感じたことは、「ポイント付与率」の高さだ。6月に発売となる「ザ・レチノタイムホワイト」は、事前予約をすると最大20倍相当のポイントが付与されるほか、それ以外の商品でもプラスポイントがあるなど、他の化粧品メーカーと比べて〝お得感〟も上回る。
このように、大手ドラッグストアが本格的にPB化粧品の強化を図ることは化粧品専門店にとって脅威であることは間違いなく、そうした状況を踏まえた上で〝専門店らしさ〟を磨き上げ、差異化を際立たたせていくことが今後益々重要になりそうだ。
(中濱)
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