• 日本商業新聞

【2022/10/10 日本商業新聞】インバウンド回復に期待

 

 岸田文雄総理大臣は、10月11日から新型コロナウイルスの水際対策の緩和、並びに全国旅行支援とイベント割を実施することを表明した。これにより本格的な開国が始まることに合わせ、円安の組み合わせにより〝インバウンド消費の復活〟が期待される。国内の化粧品市場は緩やかながら回復に向かっているが、原料高に伴う値上げラッシュや年金減額など不景気感は否めず、インバウンドの復活が化粧品市場の回復の起爆剤になるかが焦点になる。(中濱)



■コロナ水際対策緩和へ


 新型コロナウイルスの水際対策緩和の主な内容は、「1日当たりの入国者数の上限撤廃」「短期滞在者のビザ取得免除」、そして「個人旅行解禁」の3点が挙げられる。特にコロナ前の訪日客の旅行形態は、個人旅行が4分の3以上を占めていたことから、個人旅行の再開はインバウンドの回復にとって大きな追い風となるだろう。


 そして水際対策以外にも、インバウンドの後押しとなり得るのが「円安」である。東京・銀座では1日100万円使う外国人もいるなど〝爆買い客〟は増えており、百貨店の「免税売上動向」をみると、コロナ前の2019年8月の「1人あたりの購買単価」は6万7000円だったのが、今年の8月は33万7000円と単価が大幅に増加しており、今後入国者数の上限が撤廃されたならば、大きな需要をもたらす要因になるだろう。また「売上上位商品群」の第1位が「化粧品」となっていることからも、インバウンドが国内の化粧品需要を押し上げる起爆剤になるかが今後注目される。


 ただ、新型コロナは、新規感染者数の増減や新たな変異型ウイルスの発症など、「いつどうなるか分からない」という部分が最大のネックであり、その都度対応が変化するため過度に期待は持つことはできないかもしれない。しかしながら、現在の国内の状況を見ると、ウクライナ情勢に伴う原料高騰による物価の上昇は家計をひっ迫させ、また4月から年金が減額になるなど、国内の消費マインドは低下する要素しかない。


 某化粧品専門店経営者によると「コロナへの慣れや規制緩和で若者の外出機会は増えているが、専門店が主力とする40代以上のお客様の来店回数は減ったままで、客数が2019年度まで回復するには依然厳しい状況にある。加えてロイヤルユーザーを多く占める年齢の高いお客様も、年金減額や物価高で化粧品の買い控え傾向がみられるなど不景気の影響を感じている」というように、徐々に店頭でも国内情勢による不景況感が漂ってきているようだ。



■化粧品メーカー〝体力回復〟が最優先


 一方、化粧品メーカーは更に厳しい状況にあると予想される。その背景には、コロナ禍による外出自粛やマスク生活の影響によって、メイク関連を中心に2020年以降激しい落ち込みをみせ、ようやく2022年に入り規制緩和等で上向き傾向になるかと思われたが、「1~7月化粧品出荷統計」をみると、「販売個数」は前年比100・9%、「販売金額」は105%とゆるやかに回復傾向にあるものの、コロナ前の水準に戻るはまだまだ足りないというのが現状だ。もっと言えば、カテゴリー別でみた場合、「乳液」の販売金額は前年比73・2%と更に落ち込むなど、未だ厳しい状況にある。


 そこに追い打ちをかけたのが「物価高」である。業績の厳しさに加え、原価率や物流費が高騰、利益をひっ迫させる要因として重くのしかかる。また〝made in japan〟の化粧品価値を押し上げた中国市場も「ゼロコロナ政策」で低迷するなど回復への糸口が見いだせていない。


 要するに、コロナ禍という厳しい状況の中で、何とか持ちこたえていたメーカーの体力も、物価高という思わぬ影響でいよいよ限界をむかえているのではないかと感じるのである。


 そこで10月から始まる新型コロナの水際対策の緩和、及び円安による〝インバウンド需要の回復〟は、例え一時的だとしても、メーカーの体力を回復させるという意味で積極的に取り組む必要性があるだろうと考える。インバウンドを起爆剤に、国内情勢や消費マインドが上昇に転じてくれることを願うばかりである。