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【日本商業新聞 2026年7月20日号】「推し活」「ファンダム」「界隈」

  • 日本商業新聞
  • 7月22日
  • 読了時間: 4分

化粧品市場ではいま、従来の年齢・性別・価格帯といった属性軸では捉えきれない新たな消費構造が浮上している。それは「推し活」「ファンダム」「界隈」という三層であり、これらは相互に連動し、ブランド成長の起点となる現象を生み出す。SNSによる消費が拡大する中、メーカー・化粧品専門店双方にとって、これら三層をどう取り込むかが競争力の分岐点となりつつある。本稿では、それぞれの層の行動特性を踏まえ、化粧品メーカー・専門店がどのように対応し得るかをマーケティングの視点から考察する。(丸毛敏行)



■SNS時代に浮上した新たな市場構造に対応する


SNSの普及により、「推し活」「ファンダム」「界隈」という新たな三層は、購買行動の起点として機能し始め、ブランドの成長モデルそのものを変えつつある。これら三層をどう取り込むかが、メーカー・化粧品専門店双方にとって今後の競争力を左右する重要なテーマとなっている。


まず、それぞれの層の特性を整理する。


第1層の「推し活」 は、個人が特定の人物・作品・色・世界観を支持し、その感情を購買行動へと結びつける活動を指す。化粧品領域では、推し色リップや推しカラーのネイルなど、感情価値を基点とした購入が増加。「推し活」層は、購買意欲が高く、投稿率も高いことから、メーカーにとっては「最速で売上を作る層」として存在感を強めている。


次に、第2層の「ファンダム」(固定客)は、特定ブランドを支持する濃いコミュニティであり、単なるファンの集合ではなく、独自の文化や価値観を共有する共同体として機能する点が特徴だ。新商品の自主的な情報拡散、レビュー共有、店頭イベントへの積極参加、二次創作的なメイク投稿などが自然発生し、広告費を投じなくてもブランド認知が持続的に拡大する。


専門店にとっても「ファンダム」は来店動機の強い顧客群であり、POPUPや限定企画の成否を左右する存在となる。ファンダム層が形成されると、ブランドは「支持される理由」をコミュニティ内で自走的に生成できるため、長期的な売上の安定化にも寄与する。


最後の第3層の「界隈」は、近年SNSでも話題となる機会が多い。例えば、「美容界隈」「韓国コスメ界隈」など、特定テーマに関心を持つ人々が緩やかに集まる領域を指し、熱量は一定ではないものの情報感度が高い。


「界隈」層は、ブランドの世界観よりも「話題性」「新しさ」「SNS映え」を重視する傾向が強い。ただし、メーカー色や宣伝臭には敏感で、過度な誘導に対する警戒感が強い点には留意が必要だ。


以上の三層は階層的でありながら相互に影響し合い、「推し活 → ファンダム →界隈」という循環構造を形成する。「推し活」層が初動を作り、「ファンダム」が継続的な支持を生み、「界隈」がトレンドとして市場全体に広げる。この循環が成立すると、ブランドは〝推される存在〟として長期的な成長軌道に乗る。


近年では、「界隈」でのトレンド化を起点に専門店での棚替えが進み、「ファンダム」層のイベント参加が売場の回転率を押し上げるなど、三層が売場運営にも影響を及ぼし始めている。メーカー・専門店双方が三層の動きを把握し、どの層を起点に施策を展開するかを設計することが、ブランドの成長速度を左右する局面に入っている。



こうした状況を受けて、メーカー・専門店が取り組むべき施策は、三層ごとに異なる。


まず「推し活」に向けては、推し色展開、限定パッケージ、コラボ企画、推し活向け携帯アイテムなど、感情価値を刺激する施策が有効。初動の勢いを作る役割が大きい。


次に、「ファンダム」層に対しては、コミュニティ施策、参加型イベント、ファン投票企画、SNS投稿紹介や二次創作など、共同体としての活動を促す企画が支持を集める。「ファンダム」層はブランドの〝語り手〟となるため、長期的なブランド価値の形成に寄与する。当社の取材に対しても、現在の不安定な中東情勢の中、各メーカーが値上げを余儀なくされる状況を受け、「ファンダム」獲得に向けた経営努力をはかると回答した専門店の声が多く見られた。


最後の「界隈」向け施策については、押し付け感を抑えつつ、インフルエンサー施策、TikTok向けショート動画、トレンドを意識した商品開発などが有効だ。新規顧客の流入源として機能し、ブランドの裾野拡大に貢献する。


三層を横断的に捉えることで、ブランドは「売れる」「広がる」「愛される」の三拍子を揃えられる。消費者の価値観が多様化する中、ブランドが一方的にメッセージを発信する時代は終わりつつある。求められるのは、ファンが自ら参加し、語り、つながる〝共創型ブランド〟だ。三層構造を理解し、適切に活用できるかどうかが、今後の化粧品メーカー・専門店の競争力を大きく左右する。

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