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【日本商業新聞 2022/1/1】「互いの成長」探る1年に

※本記事は日本商業新聞社様の許諾の上掲載しております


■3社の競争更に激化 影落とす〝チャイナリスク〟


 昨2021年度は、新型コロナウイルスの影響で各社とも厳しい経営環境下でのスタートとなった。また、第五波による緊急事態宣言での休業および時短営業など、前半から半ば過ぎまでは百貨店はじめ大都市圏での売上が大きく低下したが、10月後半から感染者数が激減したことで、徐々に市場では回復状況が見られた。


一方、地方都市では一部の店舗で休業は見られたものの、大半の専門店では通常通り営業が行われ、大都市圏と地方都市での動きに差が見られた。中でも、地方都市の一番店ではコロナ禍にあっても順調に推移する専門店も見られるなど、総体的に地方都市での専門店の回復が多く見られた1年だった。



そして、専門店以上に厳しい環境下に置かれたのが各メーカーだった。


資生堂は数字的には着実に回復しているように見えるが、日本国内事業は厳しい状況下にあり、専門店事業に於いては新ベネフィークが発売されたが、期待の3ラインの成果は2022年度となる。また、専門店向けEC「Omise+」は低調のまま約1年が経過したものの、今後、見直しが迫られることになるだろう。また、国内事業の中核である系列ドラッグストアの動きも重視されるなど課題は多い。本年同社は創業150周年事業が展開されるため、昨年以上の動きに期待が掛かるが、目標とする実績に手が届くかどうかは微妙なところだ。


 資生堂が資生堂FT(日用品事業)を売却したことで、実質的な総合メーカーはコーセーのみとなった。同社も売上的には回復状況にあるものの全体的に厳しさは否めない。その中にあって中心ブランドの一つである『コスメデコルテ リポソーム』のイノベーションが話題を集め、予約も好調に推移し発売月の9月だけで約15万個販売した。ただ、資生堂同様に専門店ECの取組み(テスト)をスタートさせたが目立った実績には至らず、見直しが図られる可能性が高いように思われる。昨年10月19日にリアルで開催された「全国セミナー」は、コーセーが専門店事業に掛ける強い想いを表した会合となり、2022年度に向けての新たなスタートとなった。そして、12月には「コスメデコルテ制度改定」では、「新割戻金制度」「新アローワンス制度」「掛率の変更」「支払いサイトの延長」などについての案内を行なっているが、ここ最近、コーセーの打つ手打つ手にスピード感を覚えるのは記者だけだろうか。

 

アルビオンは2020年度の業績が赤字決算となったのを受け、2021年度は全ての面で引き締めの1年となった。本紙のインタビューで小林章一社長は『2021年度は黒字になるかどうかギリギリの状況』と語っていたが、昨年1年間の店頭はチャレンジの連続だったが、その成果もあって専門店での回復スピードは最も速い状況にあるようだ。2022年度はアフターコロナに向けての新たな戦略をスタートさせる年となるが、同社にとって最大の課題は、今ある専門店をもう一段階高められるかどうかだ。

 

即ち、高級化粧品の販売に適した店づくりと、一人ひとりにあった接客力とカウンセリング力によるお客様づくり、そしてその店ならではの人間力と自店への投資など、圧倒的な存在に向けての協働体制と戦略の具体化が今後の同社のテーマとなる。言い方を変えれば、互いの役割をどこまで追求できるかである。


 

このように2022年度は大手3社によるバトルが相当激しくなることが予想され、この状況が2023年も続くものと思われる。そして、現状のウイズコロナからアフターコロナに向けた各社の本格的なストーリーが展開される1年になるだろうと見ている。その中にあって専門店がやるべきことは、各社の戦略をしっかりと見定め、取組むべき戦略に対し積極的に投資を行うことで自店独自のお客様づくりを目指していくしかない。

 

また、メーカーが考える戦略の中心は、上位店への集中化がさらに進む可能性が高いことが予想される。その上で、現状にあった「取引制度の改定」をはじめ、リベート・AWについて新たな考え方を投入していく必要がある。長年実施されてきた売上に応じた細かな累進リベートではなく、掛率+成長AWというシンプル設計で、より前向きな内容にすることが重要視される。要するに、「成長」したお店への「分配率(成長AW)」を高めると共に、得た「分配」(利益)を自店の店頭にしっかりと「投資」する仕組みを提案していくことが重要となる。


 

さらに、今後、メーカーも専門店も考えねばならないのは、SDGs及び環境問題に伴う対応である。従来のような返品・回収が続けられるのかどうか?また、現在のSKU数でいいのかどうか等々、生産を含めた新たな時代に向けた対応がいずれ必要となる。その為には、メーカーと取引先との話し合いによる新たなルール作りが重要視される。従来の考え方を続けていたならばいずれ新製品の発売すらさえも難しいことにも成り兼ねない。その意味で、環境問題は将来、大きな課題となることをメーカーも取引先も深く認識しておかねばならないと思う。


 

2022年度は市場は回復状況が一段と鮮明になるものの、「一般貿易法の改正」に伴い各社の中国事業のリスクが影を落とす可能性もある。さらに、原油高上昇に伴い食料品など相次ぐ値上げにより、消費者の財布の紐がさらに厳しくなることも予測される。同時に、原料の高騰をはじめ配送費用の上昇や容器・パッケージ等の価格の上昇など、様々な分野での値上げにより、メーカーの負担増に繋がる可能性もある。どちらにしても、ビジネス環境が様々な形で変化する中で、成長の道を探る一年となりそうである。