【日本商業新聞 コラム】-711- SNSの暴走
- 日本商業新聞
- 4月15日
- 読了時間: 3分
更新日:2 日前
世界中がトランプにかき回され、国によっては存亡の危機すらあるというのに、わが日本はのどかだ。
「103万円の壁」の騒動が治まったと思えば、今度は首相が配った商品券をめぐって国会は不毛の議論を続けている。つまらなすぎて隣国はニュースにもしてくれない。国のため、子孫のため、何が大切で、何を優先したら良いかというビジョンを国民全体が見失って、些細なことばかりに一喜一憂している。
それでいいのかもしれない。SNS全盛の今は、むしろ中途半端の方が、そうシロクロつけない方が賢明だと思う時がある。洗脳されて判断力の鈍っている人があまりに多く、この状況で出される判断は将来に禍根を残すような気がするからだ。
正義や真実がオールドメディアを否定する声の大きい人の発言で捻じ曲げられたり、ユーチューブで耳障りの良い陰謀論を吹き込まれたり、その伝播力はコロナにもオウム真理教にも負けないかもしれない。
かつて日中国交正常化交渉のとき、鄧小平が「難題は次世代に任せよう」と一見不見識なことを言い、それに賛同して臭いものに蓋をして日中は少しだけ仲良くなったが、団塊農耕派の今の気持ちと似ている。石丸何某、兵庫県知事、国民民主党…、SNSの歪んだ発信が彼らを保護し、美化し、市民権を与えてしまったが、その愚は繰り返したくない。
ポストに見合う能力が無いのに当選した施政者を仰ぐ国民が一番の不幸、だからSNSが危険な玩具であり続けるうちは選挙はしないほうがいいのだが、先の千葉県知事選でNHKを何とかしたい党の党首が4万票も集めてしまった。泡沫候補はトップ当選者の数%も得票できれば上出来だったが、その常識は覆されている。これだけの票が集まるのである。昔から反体制派と言われる人は居たし、その人たちを利用しておこぼれにあずかりたい日和見的な人もいた。ただそのどちらも社会的には弱者で、自分の置かれた立場は正しく理解していた。
でも今は違う。SNSだけを正義だと思い込み、それに抗う意見は憎しみを込めて否定する。昨日まで寡黙だったおばちゃんが今日は口角泡を飛ばすようになる。裏に巣食う洗脳から行動まで一切を仕切ってしまうSNSの恐ろしさを勉強しようともしない。
SNSを上手に使うやからの仕事は単純だ。テレビのようなオールドメディアでさんざん叩かれている人の同情に値する部分を探し、一方で攻撃している側の落ち度を見つけ、「ここだけの話」として大袈裟に、センセーショナルに発信する。事実かどうかなどどうでもよく、「イイネ」をたくさんもらうコンテンツ作りに励めばいいだけのこと。
事実が伝わらない世の中、ウソがまかり通る社会、恐ろしいことだが身の回りに氾濫している。団塊農耕派のパソコンには毎日100通を超える悪質メールが入る。紛らわしいメールは開けないし、家に掛かってくる電話にもほとんど出ない。もはや電話が家にある必要もない。こんな世の中でいいのかと自問自答する日が続く。
(団塊農耕派)
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