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【日本商業新聞 コラム】-710- SDGsを考える

  • 日本商業新聞
  • 4月8日
  • 読了時間: 3分

「やっと時代が僕たちに追い付いてきた」というのは自転車振興会の高飛車な広告ですが、団塊農耕派にもそう言って先見の明を自慢したいものがあります。



SDGsがまだそれほど知られていなかった20年ほど前のことです。キッカケとなったのはアイドルタレントを卒業して大学教授になった女性との出会いです。気が付けば彼女から学んだことはいくつかの作品(化粧品)の中に息づいています。彼女は著書の中でこう言っています。


「ここに同じ値段のふたつのパンがあります。ひとつは有名なメーカーで量産されたもの、サイズも重さもバラツキがありません。もうひとつは福祉作業所で焼いたもの。いびつなものあります。あなたはどちらのパンを買いますか?」


「高価なブランドのバッグを買うのにためらう必要はありません。5千円のバッグを何度も買い続けるより、5万円のバッグを買って長く使った方が、トータルの原材料費は抑えられます。環境にもやさしくなります」


「資源は有限だから使わないにしようとする考えは間違いです。モノもサービスも消費しない(お金と交換しない)とめぐりめぐって皆が貧しくなってしまいます」


「お金は使わないといけないのですが、問題はその使い方です。考えて使いましょう。このお金で何ができるか、考えてみるのです。フェアトレードの商品や被災地で作られた商品にこだわるとか、福祉作業所にわざわざパンを買いに出かけるとか…」


「そして子どもたちにそういったことを教えてあげるのです。買った理由を親子で考えるのです。そんな会話を通して子供たちはきっと成長します。」



そんな彼女の考えに団塊農耕派は共感しました。高度成長時代の価値観を引きずり、儲けることだけに重心を移しつつあった会社の在り方に一石を投じたくなりました。そしてそのころから団塊農耕派の商品開発の作法が変わります。化粧品の究極の目標は「クオリティオブライフ」だと言い切るS社の研究所長の真意が良く分かるようになりました。その後の会社の利益至上の流れは変りませんが、SDGsの精神は少しずつ根付いているようです。


「フェアトレードという概念は、そのうち当たり前になると思います。下町の作業所(S社が経営する障碍者による作業所)で作られた商品であれば1万円でも買うが、S社工場の高速ラインで作ったものなら要らない、というお客が少なからず増えます」


「資材もスケールメリットと品質の安定を求めて一流企業からだけ買うのではなく、そこから買わなければ地域全体がつぶれてしまうような零細企業からも買うべきです。その方がお客は拍手をしてくれます」


「20世紀の終わり、ある自然派ブランドの詰め合わせセットの作業を仕事がなくて困っている地方の福祉作業所に頼もうとしたら、購買部門に「口座がない」とか「偽善は潔くない」とか難癖をつけられてかなわなかったことがありましたが、10年後にまだそんな意識の購買担当者が居るようでしたら、S社は社会に見捨てられてしまいます」



21世紀も4分の1が終わった今、トランプという将来への展望もヒューマニズムも持たない愚かな大統領に牛耳られていますが、これも考えようによっては神の配剤で、彼を反面教師にして心優しい社会を目指せということかもしれません。

(団塊農耕派)

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