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【日本商業新聞 コラム】-709- 気になる言葉使い

  • 日本商業新聞
  • 4月1日
  • 読了時間: 3分

「頑張るので応援おねがいします」は勝利インタビューを受ける若手スポーツ選手の決まり文句だが、語呂が悪く、国語教育の至らなさを感じてしまう。敬語使いに徹するのならこの場合「頑張りますので…」と言うべきだろう。


また「…ですかねぇ」を昨今の若い女性は初対面の人にも平気で使うが、これも聞き苦しい。またこちらの話に「なるほど」と短く相槌を打たれるのも年長者としては気に触る。でも注意する度胸はない。



最近は年とってきたせいかこのような思慮不足の言いまわしが気になる。もうすこしトゲのない言い方、もっと美しい日本語を使えないものかと嘆くが、周りの人には理解されない。それどころかキレるジジイの予備軍として警戒されてしまう。謙譲語は年輪とともに身についていくものだと思っているが、それは希望的観測に終わるかもしれない。


居酒屋の店員の120分ルールの説明もくどい。聞きたくない。ラストオーダーは何時までとか、飲み干してからお代わりしてくださいとか、ビールの種類に限りがあるとか、来なかった人のキャンセル料をいただくとか…、酒席が台無しになる。面倒な客もいるのでマニュアルに従って予防線を張れと上司に言われているのだろうが、うっとうしい以外の何者でもない。ましてカタコトの日本でまくし立てられると店を出たくなる。


テレビショッピングでも気になる言葉使いが氾濫している。いい加減な商品を売っているくせにやたら高飛車なのだ。富山や奈良の伝統的な常備薬メーカーを装って新参があざとく商売しているが、「成分は配合上限まで入れています」とか「注文は1回だけでも大丈夫です」とか「30分を過ぎると割引が利かなくなります」といって消費者を誘導している。


成分が薬基法で定められている上限まで入っているのはどこも一緒なのに、自社だけが特別多いように言い、ネット通販はいまやサブスクが一般的なのに、うちは1回だけの注文でもOKだと恩を着せ、焦らすために勝手に設定した割引のタイムリミットを金科玉条のルールのように適用する。


そして一縷の理性が働けば逃れられると思うのだが、悲しいかなこのお粗末なつり道具に消費者はダボハゼのごとく釣られていく。オレオレ詐欺と比べれば微罪かもしれないが根っ子の商魂は同じようなものだ。



〝天に向って唾を吐いている〟のが消費者金融の注意事項だ。「ご利用は計画的に」と君子ぶるのだから呆れてしまう。計画性のある人ならばアナタのお店のお世話になどにならない。やってくるのは自己管理の出来ない人たちばかりなのだから、ここは本音で「破産するまでいくらでもお貸しします。あとで苦しみますが」と言ったらいい。盗人が防犯の話をしてもだれも聞く耳を持たない。コロナ禍のとき警察に家宅捜査された暴力団員が玄関先で手の消毒をお願いしていた光景に驚かされたが、無法者が聖人ぶるのは滑稽としか言いようがない。


SNSの隆盛と手紙離れは同時進行中だ。封筒代も郵便料金も上がった。郵便屋さんの配達頻度も減るという。文(ふみ)の文化はいっそう衰退する。団塊農耕派は晩年を違和感だらけの言葉に囲まれて生きていくことになるのだろうか。

(団塊農耕派)

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