top of page
日本商業新聞

【日本商業新聞 コラム】-697- 認証商法

かつてJAFCA(日本流行色協会)の主催するカラーコーディネーター養成講座は、その内容や日程、共に相当に厳しいものだったが、終了の免状をもらっても「資格」はもらえなかった。ところが今はお金さえ払えば安直に資格をくれる団体が乱立している。

「就職に有利だよ」「環境に優しい会社だと思ってもらえるよ」そんな誘い文句で資格をありがたがる人を釣り上げている。中には権威のある団体だと言っておきながら、合格しなければ返金するとまで言うサービス精神旺盛な、いや商魂たくましい団体もある。



 流行りのSDGsブームは彼らの商魂にますます火をつけるようで、その実践内容を評価して「優良企業」の認証を与える団体が現れた。日本でも数社がこの団体から認証を受けているが、会社の規模に応じて審査料金を払っているようだ。宣伝費と割り切れば安いものだと割り切っているのだと思うが、その姿勢は間違っている。本当に環境に良いことをしているのなら、自社のホームページや企業広告で堂々とその内容をアピールすればいい。



映画祭、ふるさと物産展、デザインコンテスト…、時々知り合いから受賞の吉報が入るが、みな高額な審査料を払ってエントリーしている。市井の中から光るものとして見つけてもらったわけではない。受賞は候補者を極端に絞った結果の所産で、分母を全同業者に広げれば、その受賞は無かったかもしれない。それでも受賞は受賞、箔がつき、周りの見る目が一段と上がる…、そう思って応募するのだろう。後ろめたさなど感じないのだろう。



お金で買える正体不明の資格や認証を人事採用の参考材料や企業のイメージ高揚に利用する企業はどうかしている。20年ほど前、S社の中国工場の正門前でニセの「学士号」が売られていて、それを買った何人かの中国人社員が「実は私は大学卒でした」と言って給料アップを求めてきたそうだが、そのくらいの茶番は見抜けるのだから、大盤振る舞いの認証団体など簡単に見破れると思うのだが、そうでもないらしい。もし見抜いた上でそれを利用しているのなら、それは消費者や社会に対する裏切り行為である。



この風潮のうらには「お墨付き」をありがたがる国民性がある。自分の目より第3者の目を信用するというのは一見謙虚だが、実は熟練度が足りないだけの話で、とても恥ずかしいことだと思ったほうがいい。クリエイティブな仕事には職人的素養が求められるが、本当に腕に自信のある職人や有能な研究員は資格になど見向きもしない。ミシェランガイドに乗ることを目指す飲食店など、味も居心地も疑ってかかかったほうがいい。本当に美味しい店なら、安らげる店なら、ガイドなどに頼らなくてもお客が容易に見つけてくれる。



企業や国が何か不祥事を起こしたとき「第3者委員会を立ち上げます」と言って一旦逃避するが、当事者ではない人が下す判定のほうが公平だと思いがちな日本人にはこの時間稼ぎにそれほどの違和感は無いようだ。委員に国民にわからないようにシンパがもぐりこみ、時間をかけて事件の軽量化を図っているのではないか、となぜ疑わないのだろう。



怪しげな認証団体は化粧品業界にもたくさんあり、メーカーや個人の差別化欲求を手助けしているが、そろそろ淘汰しないと化粧品が信用のおけないものになる。

(団塊農耕派)

Comentarios


bottom of page