テレビで「上司にしたい有名人ランキング」が発表されていたが、コメンテーターの杉村大蔵氏が尊敬される上司の条件について面白いことを言っていた。団塊農耕派も同感だ。
先ずは「いつも機嫌のいいこと」だそうだ。「いくら頭が切れても、暗かったり冷たかったりすれば部下は付いていかない」と彼は言う。団塊農耕派も長い会社生活のなかで、その考えの正しいことを体験している。「機嫌がいい」とは相手のことを考えてくれていることの証しで、懐に飛び込んで行くに値する人物であることを部下は直感する。
次は「脇の甘い人」だそうだ。例として「もらったメールに直ぐに返事を書き、見直しもせずに送信してしまう人」を挙げている。慎重に対応すべき内容を自分の思いに任せて一気に書いて送信し後で悔やむ、といったことは団塊農耕派にもよくあるが、その粗忽さが良い上司の条件だと言うのだから、団塊農耕派もまんざらでもない気持になる。
ビジネスの世界でも『会う』が『電話する』になり、そして今は『メールする』が主流になっているが、これは人間臭さが不要で、要件を事務的に伝えれば用が済む時代の到来を意味している。ネット社会が深化し、人付き合いを煩わしく思う人が多くなれば、ますますこの傾向は強くなると思われるが、どこか寂しく感じるのは団塊農耕派だけだろうか。
ところでメーカーの開発担当者は化粧品容器を調達するにあたり多くの資材メーカーから見積もりをとるが、不採用になった取引先には何の連絡もしないという実に非人道的な暗黙の了解がある。いろいろ尽力してくれたのに金銭的な折り合いが付かないだけの理由でお別れするのだから、ねぎらいの気持ちをこめたメールくらい差し上げるべきだと思うのだが、そんなことをする会社はめったにない。
「便りが無ければ不採用でしょう。それほど気にしない」と取引先は言うが、本音だとは思えない。何度も足を運び、試作を繰り返し、サンプルも提出し、言いたくないお世辞もいい、その挙句のお断り…、立場上我慢はするが、そうでなければ文句の一つも言いたくなるだろう。
同じことは大手化粧品会社の入社試験でも行われている。「非通知は不合格だと思ってください」というやり方はもはや一般的で、誰も文句を言わないようだが、熱い入社動機を持って応募してきた若者に結果を知らせてあげるのは企業の良心だと思う。ネガティブな情報は連絡したくないものだが、待つ身の切ない気持ちを考えれば、そしてまだ社会経験の浅い若者が相手だということを考えれば、温かい思いやりを施してほしいものだと思う。
よく言われる言葉に「イエスから入る人」「ノーから入る人」があるが、今は圧倒的に後者が多い。メールに返事を書かない人も、不採用や不合格を連絡しない会社もこの類で、「脇の固い人」と称され、世渡り上手だと思われている。保身に走る政治家や信念のない会社経営者に多く、この人たちの部下になったら良いことなど何も無いのは大蔵さんの言う通りだ。逆に危険な案件まで安請け合いしてしまう「イエスから入る人」は痛い目に遭うこともあるが、そのマイナス分は恩恵を受けた人たちがいずれ余禄をつけて返してくれることになる。「情けは人のためならず」とはよく言ったものだ。
(団塊農耕派)
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