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  • 日本商業新聞

【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -639- 強欲資本主義

 岸田総理の言う「新資本主義」というのがよく分からない。投資のススメが目玉政策のようだが、収入を増やすことにうつつを抜かし、今以上に世知辛い世の中にしてしまうのではないか、まさかホリエモンや旧村上ファンドに教えを請おうとしているのではないか、心配の種は尽きない。


 資本主義とは持てる者がその資本を有効に使って持てない者を支配するやり方で、性善説が前提にあるものの、行き過ぎれば民主主義という鎮痛剤が効かないくらいまでに所得格差が広がってしまう。勝者が暴走する昨今の日本社会には残念ながらその傾向が色濃く、社会は閉塞感にさいなまれている。


 世間から集中砲火を浴びている某中古車販売会社の事件はその典型で、経営者の心根の貧困さを感じる。可愛いのは身内とお金だけ、従業員もお客もクライアントもすべてがメシのタネ、地位があれば何でもできる…、そこには経営者として品位も節度もない。部下のせいにして逃げ切りをはかろうとしたが、あまりに浅ましい。「従業員は悪くありません。悪いのは私です」と号泣した旧山一證券の社長が懐かしい。



 善良な資本主義とはもはや死語なのだろうか。オリンピックの巨大利権を貪った電通、コロナの補償金に群がった小悪人&小市民、僅かな報酬のために危険なバイトに応募する思慮足らずの若者、無慈悲な取引を押し付けて末端業者を苦しめる大手企業…、皆が社会正義に則って切磋琢磨し、きれいなお金と心が循環する「善良資本主義」は姿を消し、今あきれるほどの「強欲資本主義」が横行している。岸田さんが正すべきはこの誤った資本主義で、儲けを増やす手段を教えることではないと思うのだが。


 化粧品メーカーも強欲資本主義に染まっていると言ったら怒られるかもしれないが、昨今の新製品の高値化傾向は気になる。なんの変哲もない美容液がブランドの傘に守られて高い値段がつけられている。給料が上がらず、物価高に苦しむ国民が多いなかで、何故化粧品だけがインフレに走るのか、卵や油の値上げに便乗する程度ならまだカワイイが、価値に見合った適正な価格だと考えているのなら、世間知らずも甚だしい。


 化粧品専門店も共犯になってしまう。メーカーの提示する希望小売価格に抗わず、いやむしろ高い利ザヤにほくそえみ、気心の知れたお客に売りつける姿勢はメーカーと五十歩百歩で、お客の方を向いているとは言い難い。


 高額品を無理やり売れば一時の収入に結び付くかもしれないが、長い目で見れば小売り店の体力を少しずつ削ることになる。どんなに店を信用していても商品に割高感を感じれば、そしてお金を捻出できなくなればお客は去っていく。このときダメージを受けるのは小売店で、メーカーは傷つかない。メーカーは不浄なお金でもロンダリングして他の事業に振り向けられるが、小売店はそうはいかない。大切なお客は還ってこない。長くお店に来ていただくために奨めるべき商品は何なのか、高額品の誘惑に負けず、小売店は善良資本主義のカガミになってほしいものだ。

(団塊農耕派)

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