top of page
  • 日本商業新聞

【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -638- 日産グリーンカップ

 日産グリーンカップとは今はサッカーの大会のようだが、団塊農耕派の若い頃は草野球の大会だった。


 都道府県で予選を行い、日本一を競うスタイルは甲子園の高校野球と同じだが、参加資格の緩さもあって、参加チームは殺到した。団塊農耕派が出た神奈川県の予選には200を超えるチームが集まった。


 そこで主催の日産自動車は手を抜く。アットランダムに4チームをまとめて1ブロックとし、あとは当事者間で相談して勝手に出場チームを決めてくれという無責任なやり方だった。本当に試合をしてその勝者を選んでもいいし、ケンカで決めてもいいし、お金で権利を売ってもいい、という野球を冒とくした内容だったが、意外と抵抗は少なく、期限までに48チームは出そろった。名誉のために言っておくが、団塊農耕派のチームは毎年きちんと勝ち上がって出場した。


 その本大会で日産の追浜工場と戦ったことがあった。そのとき「主催者を負かすと来年は出られないかもしれない」とマネージャーがまことしやかに言い、選手たちは戸惑ったが、八百長をやるほどのスキルも無く、勝ってしまった。


 ところがこのとき別の形で日産を怒らせてしまった。〝隠し玉〟だ。日産の最終回の反撃をこの姑息なプレイで潰したのだが、日産の応援席から「きったねぇ~」だけでない強烈な罵声が浴びせられた。「S社の化粧品はもう買わねぇ~ぞ」。


 しかし不買運動は起こされず、怒りはその時だけだった。それどころか実力伯仲であることがわかったこともあり、翌年から交流試合を繰り返して親交を温めた。


 家族も参加する楽しい催しになり、年々その規模は拡大していった。ところがこの交流はゴーンが社長に就任した頃から途絶える。無駄で非生産的な催しと位置付けられてしまったのだろう。


 それから四半世紀、企業に大勢が集まって何かを楽しむという企画が少なくなった。運動会や合同旅行をする会社も圧倒的に少なくなった。「会いたくもない上司や同僚と一緒に休日を過ごすなんて…」と考え、平然と仕事と私事を離して考える人が多くなった。


 欧米型のジョブ型採用が増えるに従い、職場の人間関係などどうでもよくなり、ますますこの傾向は強まると思われるが、オフィスに出るのも嫌がり、自宅でPCで仕事をしたがる「進歩人」はそもそも運動会なんかに価値を見出すわけがない。


 〝居心地の良さとは誰にも束縛されない世界に閉じこもることで、最も忌むべきは人付き合いに疲れる世界〟と言う人が居るが、残念ながら団塊農耕派の脳にはそれを理解する部位が無い。


 コミュニケーションを大切にしてきた街の化粧品屋さんも同じだと思う。むしろ「進歩人」こそ病んでいると思った方がいい。脳にβアミラーゼが蓄積すれば認知症になるように、この人たちの脳には〝人間嫌い病〟の引き金になる異物が溜まっている。それは腫瘍のようなもので、人恋しい世界に浸ることでしか治癒できない難病だと思う。


 街の化粧品店が肌の主治医を自認するならば、この難病もコミュニケーションという妙薬で直して差しあげたらいいと思う。全粧協も『全国専門店草野球大会』など企画して、企業から協賛金をせしめたらいい。

(団塊農耕派)

Comentarios


bottom of page