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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -615- WBCと門田と鳥谷

 3月に野球ファン待望のWBC(ワールドベースボールクラシック)が行われるが、それに出場する選手が栗山監督から発表になった。彼らしい人選だと思ったのは、勝ちにこだわり常連の選手を選ばなかったことと、メジャーリーグで活躍している日本人選手を多く選んだことだ。


 母親が日本人ということで日本のファンには知られていない大リーガーも選ばれており、何事にも演出を先行する栗山監督らしいやり方だが、この大会をずっと楽しみにしてきた団塊農耕派の胸のときめきは低下した。極論すれば大リーガーなど選ばずに日本の球団で日本の野球をやっている選手だけで戦って欲しかった。偏屈な考えだが、国別対抗の競技で、アメリカの野球にあこがれて出て行った選手が〝ふるさと選手〟として凱旋して活躍してもちっともうれしくない。狭量な考えであることは承知しているが、WBCの戦いとはそんなものだと思っている。ちなみにイチローがWBCで足跡を残したのは大リーガーの選手だったからではない。汚い野球を続ける韓国に「2度とこのチームに日本には勝てないと思わせてやる」と熱っぽく言い、1本のヒットで日本を勝利に導いたからだ。団塊農耕派はこのときはじめてイチローを見直した記憶がある。


 ところでメンバーの発表のあったその日、元南海ホークスの門田博光さんが亡くなった。王、野村に次ぐホームラン記録を持っている名選手だが、実績のわりに知名度が低く、長嶋や清原のようなスターではなかった。彼は怪我ばかりしていた。それでも不死鳥のごとく立ち直り、芸術的なホームランを連発したが、彼の「走りたくないのでホームランを狙う」という発言は忘れられない。故障のせいで走れなくなったのだが、このあっけらかんとした発言に人生哲学を感じてしびれた人は多いと思う。また普通は実績を上げるにしたがって背番号を小さくして行くものだが、彼は逆に大きくしていき、最後は78までつけた。現役時代は変わった選手だと思っていたが、今は粋な選手だったと思いなおしていた。


 団塊農耕派にとっていままでのWBCで最大の感動的な場面は〝逆転を呼び込んだ鳥谷の2盗〟だ。紙面が足りないのでその説明は省くが、日本の野球ならではの気合と技術が合わさった見事なシーンで、ベースボールと野球の違いを感じさせるに十分だった。9回2死からの無謀とも思える盗塁は、鳥谷から見れば計算づくの試みだったようで、それはまさに緻密な野球を得意とする日本の野球の真骨頂で、大リーガーの力任せの大雑把な野球とは一線を隔てるものだった。


 WBCで観たいのは、アメリカナイズされた大谷やダルビッシュのパワフルな野球ではなく、門田や鳥谷のような粋な職人芸だ。大リーガーと同じベクトルに育ってしまった選手を見たければ、テレビでいつでも見ることができるし、せっかくのWBCの機会を奪ってまで見ることもない。


 こんなコラムを書くとおそらく大半の野球ファンからブーイングを浴びると思うが、団塊農耕派はめげない。野球はベースボールより格下ではないし、国対抗で戦うのだから、日本ならでは美学を持って戦うのがいちばん美しいカタチだと思う。

(団塊農耕派)

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