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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -614- ストライキをしよう

  日本だけが賃金の上がらない理由はたくさんある。経営者があまりに慎重居士で、内部留保するしか知恵が無く、人件費をケチったのが最大の理由だが、おとなしいポチに成り下がった労働者側にも問題はある。


 高度成長を終えたあと、日本企業の労働組合は明らかに〝腑抜け〟状態に陥った。全ての問題を〝対立〟より〝協調〟で解決しようとした。空腹も差別も味わったことのないホワイトカラー2世が組合役員を勤めるわけだから仕方ないが、自分たちの親世代がブルーカラーからのし上がるために発揮した闘争心を微塵も引き継いでいなかった。半世紀前は高等戦術だった「ストライキ」など野蛮な行為を考えているようで、まるでウクライナ戦争における核兵器の使用のように、ありえない武器として考えているようだ。


 皮肉なデータだが、日本で給料が上がらなく時期は、労働組合がストライキをやらなくなった時期と符合している。もっとも効果的な戦術を放棄しているのだから会社にとって怖いものは無く、従順な労働者などどうにでもなった。1円でも多く貯めたい経営者はほくそ笑み、労使協調を美談のように喧伝してきた。メーデーなど形骸化してしまった。


 そして企業はやり過ぎた。あらゆる会社が金太郎飴のように労働者を冷遇し、その数を減らし、非正規社員でその穴を埋めようとした。この愚挙は、昨今の優良(?)企業の共通発想だが、老舗企業の多くは秘伝のたれを失い、業績低下を招いた。それだけではない。日本社会から活力を奪い、格差社会の原因となった。ところがそんな明解な事実があっても国も労働組合もなんらファイティングポーズを示さなかった。20年も給料があがらなかった事実は身から出たさびだと言えないことも無い。


 しかし異常な物価高に陥り、ようやく国もこの問題にメスを入れる気になったようだ。令和5年の春闘は〝大幅賃上げ要求〟を行い、それが認められそうな風向きだ。めでたいことだが腑に落ちないのは「やれば出来る」のにしなかったこの20年を反省せずに、企業側が簡単に国の説得に応じたことだ。労働者側は不毛の20年を「どうしてくれる」と怒るべきだが、労使協調を旗印としてきた組合にはその権利は無いかもしれない。


 一方でこれだけ企業が物分りがよいと別の心配がもたげてくる。ひょっとしたらコチラのほうが将来に禍根を残すことになるかもしれない。岸田総理が唐突に年功序列制の見直しと職務給の導入を公言しているのだ。この制度は一部の企業では導入済みだが、年齢に関係なしに能力の高い人、実績をあげた人が評価されるという欧米発想の考えだ。いわゆるジョブ型契約と言われるものだが、そこに人材育成などの配慮は無く、自己申告の盛り方の上手な奴が勝ち残るイヤな世界だ。殺伐とした風土になってしまった会社がたくさんある。


 またこの制度の導入により会社は人件費を巧く削減することも出来る。賃上げの要求に便乗すれば、やりたいと思っていたジョブ型採用に難なく移行できる。しかも人件費を抑えられる。〝渡りに舟〟と思っているのかもしれない。労働者も黙っていることは無い。その兆しを感じたら、いまこそ天下の宝刀「ストライキ」を武器に戦うべきだ。

(団塊農耕派)

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