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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -608- 円安、物価高に思う

「金融の緩和」だけが具体策だった「アベノミクス」は言い出しっぺの逝去とともに失敗の烙印が押されようとしている。


 故人をムチ打つつもりは無いが、その愚政が未曾有の円安と物価高を招いたわけで、それだけでも国葬に値する政治家ではなかったと言わざるを得ない。この国難に対して現総理も「新資本主義」なる新たな経済方針を打ち出しているが、これも中味が良くわからず、誰も期待していない。


 いまの日本経済は八方ふさがりという言葉がぴったりなのだが、すべての不幸の根源には「良いものを安く作って安く売る」という誤ったモノつくり哲学と、それを享受して「安いもの大好き」になってしまった愚かな国民が居る。またその風潮に便乗して、モノづくりより上位に居ると錯覚し、人のふんどしで相撲を取ることに後ろめたさを感じない安売り企業がふんぞりかえっている。そんなハイエナに食い荒らされ、負け組に追いやられた東芝やシャープなどの老舗企業は、まさに亡国の戦犯ということになる。


 日本だけが20年も給料が上がらないという事実はまさに衝撃だ。それでもクーデターが起きなかったのは、日本国内で暮らす分には、鎖国の続いた江戸時代のように、それなりに楽に生きていけたからだが、アメリカのインフレが世界中を苦しめる事態になった今、給料の安い日本国民は身動きがとれないほど惨めな状態に置かれてしまった。


 日本企業にマンハッタンの一等地を買われ、国の行く末を心配しだしたプラザ合意の前のアメリカ人の気持ちがわかるようになった。いま日本は諸外国の草刈場になっている。京都の老舗旅館が、北海道の水源が、そして食卓に並ぶはずのマグロが、外国資本に買われていく。それも当然のことと一笑に付すグローバル人間には痛くも痒くも無い話だろうが、団塊農耕派はそんな気持にはなれない。打ちひしがれてしまう。中韓がそばに居るだけでアレルギーを感じてしまうと言えば叱られるだろうが、本音を隠すことは出来ない。お願いだから中国人は中華料理だけを食べて、マグロの刺身は食べないでほしい。


 ようやく政府は重い腰をあげて円安の解消に努めようとしているが、円買いの介入しか知恵がなく、それでは焼石に水で、細菌が叩かれれば叩かれるほど耐性が強くなるように、ドルも天井知らずに強くなっていく。結果的に原材料を輸入に頼っている国内の中小企業の苦しみは限度を超えている。


 それでも政府も日銀に抜本的な解決策を打ち出せない。金利を上げれば不景気が訪れるという一次方程式に頑なに拘っている。たしかに彼らの理屈もわからないわけではないが、黙って嵐の過ぎ去るのを待つだけとはあまりに情けない。トップが馬鹿だと何も出来ないと嘆いた元阪神の投手の気持ちが良くわかる。


 平成以降、日本経済は舵取りを誤ったと言わざるを得ない。泥船は沈め、もう一度港に戻り、新たな航海に備えたほうがいい。「新資本主義」はそこで体裁を整えればいい。お仕着せのグローバルリズムが日本人には重荷だと思うのなら脱ぎ捨てればいい、成果主義より年功序列が、フラットな組織より徒弟制度が、CS(消費者第一)よりES(従業員第一)が良ければ、アナクロと言われようが、昭和に戻る勇気があってもいい。

(団塊農耕派)

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