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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -200- 千葉独立構想⑴

「部落」という言葉が差別用語になって久しいが、関東地方ではその意識が薄く、団塊農耕派の少年時代は「部落対抗野球大会」とか「部落別リレー」といった言い方が何の抵抗もなく受けいれられていた。子供なのに所属する部落に対する愛着は強く、戦国時代の合戦のようなケンカも部落単位でやったものだ。お気に入りの女の子が違う部落の子と仲良しになろうものなら、それはもう戦いを挑む理由としては十分だった。


 ウイグル自治区の紛争もスコットランドの独立騒ぎも根は一緒で、多民族国家が仲良く共存するのは所詮無理なようだ。民族愛というのは日本人には想像もできないくらい熱く、排他的なのだ。ずっと昔、内房線の中で、あるいは市川の図書館で、わけもなく好戦的な隣の国の高校生に殴られたが、彼らは日本に対する憎しみを基礎体温として持っているようであった。いまでも何かの導火線に火が付けば開戦のゴングが鳴りひびいてもおかしくない。ウクライナの問題のように、いま世界中にこの種の火種がある。


 日本にはアイヌ、アメリカ大陸にはインディアンやエスキモーといったように、民族がその独立性や文化を失ったケースはいくらでもある。考えようによっては沖縄も同じで、島津藩に統合されるまえの琉球王国を理想と思う人もいる。日本本土の防衛のために犠牲になるのなら、いっそのこと独立したいと思うのは不自然ではない。中国という禿鷹が乱舞する地域だけに日本政府が認めるわけがないが、スコットランドの国民投票のようなものを沖縄がやったらどういう結果になるか興味がある。


 悪乗りの極みだが、わが千葉県を独立させたい気持ちが少しある。千葉県は工業も農業も観光も自前でやっていける…、東京や神奈川の台所にもなっている…、他県からもらう部分より差し上げる部分の方が圧倒的に多い…、そういう傲慢な考えが底流にある。


 利根川の南と江戸川の東の部分を房総王国とし、農業立国を目指す。貨幣は「だっぺ」。伊能忠敬か長嶋茂雄の顔をお札に刷る。1だっぺは1ドル。妄想は尽きない。

 京都や大阪も独立したいのではないかと思うときがある。東京への屈服感はみじんもないし、関西の文化を堂々と東京に移植している。最近のテレビで目立つのは韓流ドラマと関西弁だが、都内の電車の中でも目立つのも中国語と関西弁で、関東の人間としてときにうっとうしく思うことがある。この感情は郷土愛に源を発するが、トランプ大統領以来世界中に広がったナショナリズムと似ていなくもない。それが昂じれば紛争になってしまうが、美しい風土や同胞をよそ者に蹂躙されたく気持ちは理性では抑えられないかもしれない。


 元横綱の朝青龍は土俵に上がると、相手を母をいじめる異邦人だと思うのだそうだ。そうやって戦意を高め、怒りを爆発させるのだから、熱くならない日本人力士が勝てるわけがない。朝青龍にとってモンゴルは守るべき唯一の心のふるさとで、日本人にどう思われていようが、そんなことはどうでもよかったのだろう。


 勝手に独立宣言して房総王国ができても、同じような動機でできた浪花帝国と仲良くできる自信がない。きっと紛争を勃発させるだろう。止めることにする。

(団塊農耕派)