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【日本商業新聞 コラム】心意気と美学 -162- 紅白歌合戦


町の化粧品屋さんがこぞって「若い人が来ない」と嘆き始めてからおそらく四半世紀は経つだろう。そしてほとんどが有効な手立てを考えられないまま今に至っている。将来のためには若い新しいお客が欲しいが、今の大切な年配のお客も放したくない。そう考えると若い人を誘引する良いアイデアが浮かんでも二の足を踏んでしまう…、そんな繰り返しだったと思う。



 団塊農耕派の知る限りにおいて、この命題に取り組み成功した化粧品専門店は、別店舗展開や業態転換したお店以外には無いと思う。化粧品がファッションやトレンドにも籍を置く以上、全世代に好まれるお店をつくると言うのは机上の空論かもしれない。



 コペルニクス的転回をしたのが大塚家具だった。でも失敗に終わった。顔の見える客に高額な家具を売る伝統的な商法を時代遅れと決めつけ、ニトリよりやや良い程度の商品を中低価格で売るマーケティングに転換したが、結局は老舗ブランドの崩壊という悲劇に終わってしまった。



 隣りの芝生が良く見え、自分の遺伝子を過小評価する…、よくある話だが、企業がその病気にかかると大変なことになると言う例えだった。

 牛丼の吉野家にも同じような事件があった。松屋やすきやとくらべて圧倒的に少なかった女性客を取り込もうと、メニューの刷新や店舗の改装に努めたが、食事単価と回転率が下がり、挙句の果ては男性客に敬遠され、一気に売り上げを落とした。吉野家は〝かきこむように一気に食べ、さっさと出て行き、それほどお金を持っていない男〟をリアルターゲットに戻して、再び栄光を取り戻している。



 団塊農耕派の住む町にパチンコ屋ができることになったのは30年も前のことだが、騒音を嫌う住民の要望を汲んで完成した店は従来のパチンコ屋とは全く違うものだった。軍艦マーチではなくワルツが流れ、上品な香りで満たされ、店員は蝶ネクタイまでしていた。最初は女性客も多く、繁盛していたようだが、1年も経たないうちに店を閉じた。パチンコ屋の本筋をはずした店に男性客は見向きもしなかったようだ。



 紅白歌合戦の体たらくが著しい。とにかく面白くない。団塊農耕派の世代から見ればうるさいだけの知らない歌手が大半で、若い世代から見れば音楽性を感じない演歌歌手が混じっている。音楽の種類も雑多、演出は過剰、年末の貴重な時間をこんなコンセプト不在の番組を見せつけられ、それぞれの世代が辟易している。

 NHKはいまだに視聴者は国民全体だと思っているフシがある。だから誰にも喜ばれる内容にしようとしているようだが、所詮は無理だと思ったほうがいい。「国民的行事」というしがらみも忘れたほうがいい。早晩つぶれる運命にあるという自覚のもと、ベンチに戻り、あらたな方針と戦略をたてる時期が来ている。



 資生堂は雑貨的なブランドを売却し、プレステージに特化したが、それは英断に値する。〝皆に媚びを売り、大切な顧客に見放される〟という構図から脱却できると思う。

 さて化粧品専門店も他人事ではない。いまは大きな決断は出来なくても、コロナ明けは守るもの、変えるものをじっくり考えてみるのに良い機会だと思う。(団塊農耕派)